備える ― 個人用BCPと生活再建
ここでは、「逃げ場のない町」で生きる私たちが、災害後も生活を続けていくために必要な個人用BCP(Personal BCP)と、生活再建の考え方をまとめています。
ハザードマップや避難訓練だけでは足りません。自宅が使えない、仕事ができない、地域に立ち入れない――そんな状況を前提に、「それでもどうやって生きていくか」を考えるのが、このページの目的です。
個人用BCP(Personal BCP)とは
BCP(Business Continuity Plan)は本来、企業が災害や事故にあっても事業を続けるための計画です。瀬戸内防災ラボでは、この考え方を個人や家族のレベルに落とし込み、次のような内容を含めた「個人用BCP」として提案しています。
- 大地震・津波・液状化・工場災害など複合災害の想定
- 命を守るための具体的な行動計画(避難・屋内退避・広域避難)
- 自宅が使えないときの仮住まい・移住のシナリオ
- 仕事・収入が止まった場合の経済的な備え
- 生活再建のための短期・中期・長期のロードマップ
- 家族・親族・地域との連絡・支援ネットワーク
「いつ起きるかわからないから考えない」のではなく、「起きる前提で、できることを一つずつ決めておく」ためのノート、それが個人用BCPです。
個人用BCPシート(PDF)を使ってみましょう
瀬戸内防災ラボでは、そのまま印刷して書き込める個人用BCPシートを無料で配布しています。家族会議や地域の勉強会、ワークショップでも活用していただけます。
個人用BCPの基本構成
瀬戸内防災ラボ版の個人用BCPは、次の10項目で構成されています。
- 基本情報(氏名・家族構成・住所・緊急連絡先・持病など)
- 想定する複合災害(地震・津波・液状化・工場災害・立入規制など)
- 命を守る行動計画(一次避難・二次避難・広域避難)
- 避難経路と避難先(近くの避難先/遠くの避難先)
- 財産を守る計画(保険・資産・重要書類・家や設備の記録)
- 生活再建の計画(短期・中期・長期の暮らし方)
- 収入を守る計画(仕事・収入のBCP/オンラインでの仕事)
- 人間関係・支援ネットワーク(頼れる人・支援機関)
- デジタルBCP(データ・写真・契約情報の守り方)
- 私の復興ロードマップ(0〜3日/3日〜30日/1ヶ月〜1年/1年以降)
個人用BCPの作り方(3ステップ)
STEP 1:自分の地域のリスクを書き出す
まずは、ハザードマップだけでなく、地形・工場・道路・過去の災害といった情報も含めて、自分の地域にどんなリスクがあるかを書き出します。
- 地震の揺れ(震度)
- 津波の浸水想定
- 液状化可能性
- 近くの工場・危険物施設
- 過去に起きた災害や事故(油流出など)
- 避難所・高台までの距離とルート
STEP 2:避難と生活再建の「シナリオ」を考える
次に、災害発生からの時間の流れに沿って、どう行動するか・どこで暮らすか・どう収入を維持するかを段階的に考えていきます。
- 0〜3日:命を守る行動(どこにどう逃げるか/誰に連絡するか)
- 3日〜30日:仮住まい・避難生活(どこに滞在するか/生活費はどうするか)
- 1ヶ月〜1年:仕事・学校・介護などの再開(どこで働くか/学ぶか)
- 1年以降:元の地域に戻るか、別の場所で暮らすかの判断
STEP 3:紙とデジタルで「見える化」して共有する
作った計画は、紙にもデジタルにも残しておくことが大切です。
- 紙:家の目立つ場所/避難バッグ/車などに保管
- デジタル:スマホ・クラウドストレージ(Googleドライブ等)
- 家族・親族・信頼できる人にも共有しておく
家族で話し合うためのチェックリスト
個人用BCPは、一人で抱え込むものではなく、家族や周囲の人と話し合いながら作っていくことが大切です。次のような項目を、家族会議のテーマとして使ってみてください。
- 発災時、それぞれがどこにいる可能性が高いか
- 集合場所をどこにするか
- 逃げる優先順位(命・薬・貴重品など)
- 広域避難先として頼れる親族・知人はいるか
- スマホが使えないときの連絡方法(伝言ダイヤルなど)
- 避難が難しい家族(高齢者・障害のある方・子ども)をどう支えるか
デジタルBCP ― データと記録を守る
生活再建の場面では、証拠や記録があるかどうかで受けられる支援や保険金が大きく変わる場合があります。
- 自宅や設備の写真・動画を撮っておく
- 保険証券・契約書類・通帳などをスキャンしてクラウドに保存
- 家族写真・思い出の写真をバックアップしておく
- パソコンやスマホのデータを定期的にバックアップ
「モノ」は失われても、「情報」と「記録」は守ることができます。これも立派な防災対策のひとつです。
一人ひとりが「自分の再建計画」を持つために
瀬戸内防災ラボでは、「逃げ場のない町」の現実を前提にしながらも、できる限りの備えを積み重ねていくことを大切にしています。
個人用BCPは、完璧である必要はありません。最初は数行でもかまいません。
大切なのは、「何も決めていない状態」から一歩踏み出すことです。
講座やワークショップでは、ワークシートを使いながら、参加者の方と一緒に計画づくりを進めていきます。興味のある方は、ぜひプログラムのページもご覧ください。