その避難、本当に正しいですか?
――新刊『あなたの避難方法は間違っていないか』序章より
災害が起きたとき、
「とにかく避難所へ逃げる」
この行動を、疑ったことはありますか。
日本の防災では長い間、避難=屋外へ出て指定避難所へ向かうことが前提として語られてきました。避難訓練でも、学校でも、地域でも、それが“正解”として教えられてきたはずです。
しかし本当に、その避難方法はすべての地域・すべての災害で正しいのでしょうか。
この本は「国」や「行政」そして「企業」を批判する本ではありません。
この本を発刊するにあたり、一つだけお伝えしたいことがあります。
この本は、国や行政そして企業を批判するための本ではないことです。
この本を手に取ったあなたは、今の現実を知っていただき「国」や「行政」そして「企業」と今後どのように共存していき、被害を最小限に抑えて、被災後の生活再建を一緒に考えていくという一つのプロセスを考えていただくための本なのです。
「国」や「行政」そして「企業」と一緒により災害に強い町づくりに貢献することを願っています。
高度成長時代の日本の町は「防災」を前提に作られているのでしょうか
戦後、日本は高度経済成長期に突入しました。
各地で埋め立てや造成が進み、海沿いや河口部には巨大なコンビナートが次々と建設されました。
当時、南海トラフ地震という超巨大地震は、今ほど現実的な脅威として認識されていませんでした。
経済成長が最優先され、防災や長期的なリスクは、どうしても後回しにされてきたのです。
その当時はそれが、一番国力をつけ国民を幸福にできると信じていたからなのです。
その結果、私たちは
- 海に近い
- 工業地帯に隣接している
- 災害時に複合リスクが発生しやすい
そんな場所に、今も普通に暮らしています。
巨大地震を経験した今も、避難の考え方は更新されているのでしょうか
21世紀に入り、状況は一変しました。
阪神・淡路大震災、東日本大震災――私たちはすでに、想定を超える災害を現実として経験しています。
南海トラフ地震の被害想定も、国や行政から繰り返し発信されるようになりました。
それでもなお、コンビナート周辺に暮らす住民の避難方法は、
本当にアップデートされているでしょうか。
水害では「垂直避難」という考え方が広まり、自宅の2階に上がる判断も一般化してきました。
一方で、災害の種類や周辺環境を十分に考慮しないまま、
「とにかく避難所へ逃げる」
という指導が、今も当たり前のように行われている地域が多く存在します。
コンビナート災害で「外へ出る」ことが危険になる瞬間
本書では、日本有数の規模を持つ水島コンビナートを具体例として取り上げています。
平常時は何事もなく稼働している巨大施設。
しかし、ひとたび大規模災害が起きたとき、
- 有毒ガス
- 火災
- 爆発
- 風下への拡散
- ケミカルスープとして有害な水が海面を覆ってしまう
といったリスクが、同時に発生する可能性があります。
ところが、
「災害時に何が起こり得るのか」
「どの方向が危険になるのか」
こうした情報を、住民が事前に十分知らされているケースは多くありません。
情報を丁寧に見直していくと、ある事実が見えてきます。
状況によっては、家の外へ出て避難所へ向かう行動そのものが、命を危険にさらすかもしれません。
逃げるか、留まるか――判断を分ける「風」という要素
誤解しないでください。
本書は「逃げるな」と言うための本ではありません。
また、「必ず家にいろ」と命じる本でもありません。
重要なのは、条件を知らずに動くことです。
特に見落とされがちなのが、
- 風向
- 風の強さ
- 時間の経過
という要素です。
風を無視した避難判断は、安全どころか、取り返しのつかない結果を招くことがあります。
それでも、この視点は避難訓練や行政資料では、ほとんど語られていません。
このブログと本で伝えたいこと
この本、そしてこのブログで伝えたいのは、
「正解を押しつけること」ではありません。
あなたが住んでいる地域で、
- 避難所へ向かうことが本当に安全なのか
- 家に留まるという選択肢は成り立つのか
- 何を基準に判断すべきなのか
その材料を、平時のうちに持っておくことです。
次回予告:なぜ「これは予言書ではない」です
次回の投稿では、
「これは予言書ではない」
というテーマを扱います。
・予言ではなく条件を語る本
・恐怖を煽らない理由
・判断力を渡すという目的
について、具体例を交えながら解説していきます。
ぜひ、次回もお読みください。

コメント